「あのときキスしておけば」６話より、主人公の桃地のぞむ(松坂桃李、右)と、ヒロインのオジ巴(井浦新、左)

登場人物の中身が入れ替わる〝入れ替わり?ドラマが民放で連続している。１月～３月の「天国と地獄～サイコな２人～」（ＴＢＳ系）、４月からは「あのときキスしておけば」（テレビ朝日系）が放送中だ。リアルとはかけ離れた設定のどこに魅力があるのか。コロナ禍で他者との距離がつかみにくい時代に「視点や立場を変えて、お互いを理解しあう物語に癒しを感じる視聴者が多いのでは」と分析する識者もいる。

桜の花びらが舞い散るなか、良い雰囲気になった主人公（松坂桃李＝まつざか?とおり）と、おじさん（井浦新＝いうら?あらた）がキスしそうになり…。主人公はそっと避け、がっかりしたおじさんから蹴られる。

「僕の大好きな彼女（麻生久美子）は今、中年のおじさんの中にいます」から始まる、「あのときキスしておけば」（金曜午後１１時１５分ほか）の一場面だ。

入れ替わったヒロインと主人公の恋愛の話であり、ヒロインとおじさんを取り巻く家族の話であり、死者が生き返る話でもある。

さまざまなテーマを内包する同作に、担当する同局の貴島彩理（きじま?さり）プロデューサーは、「あえて〝入れ替わりドラマ?と銘打ったのは、設定が伝わりやすく、興味をもっていただきやすいと思ったから」と話す。

昭プラダ tシャツ 昭和から愛されて

人格が入れ替わる物語は、古くからエンターテインメントの一様式として愛されてきた。

日本の映像作品には、高校生男女の青春を描いた映画「転校生」を筆頭に、サラリーマンの父（舘ひろし）と女子高生の娘（新垣結衣）によるドラマ「パパとムスメの７日間」（ＴＢＳ系）、総理大臣の父（遠藤憲一）と学生の息子（菅田将暉）が入れ替わるドラマ「民王（たみおう）」（テレビ朝日系）などがある。

熱血刑事（綾瀬はるか）と殺人事件の容疑者（高橋一生）が入れ替わった「天国と地獄」も含め、いずれも普通なら絶対にあり得ない立場を経験することで、お互いを理解して絆を強め、人間として成長し、周囲の環境が好転していくのが特徴だ。

あるテレビ局関係者は「最近の視聴者は『時間を無駄にしたくない。失敗したくない』という意識が強い。だから、内容がある程度、見なくても予想できるドラマが好まれる傾向にある」と話す。「〝入れ替わり?は最初から想像できるあらすじがある分、集客力が強い」というわけだ。

コロナ禍に安心感

「パパと－」を担当した脚本家、荒井修子さんは「〝入れ替わり?は、物語のひな型があるので、さまざまなテーマや要素を盛り込みやすく、時勢を反映しやすい」と話す。かつ、「重いテーマでもファンタジーに包むことで、気持ちよく見てもらうことができる」と、根強い人気の理由グッチ tシャツ bts いて分析する。

また、コロナ禍でぎすぎすした世の中の空気と合わせて、「人間関係に疲弊する人が多いなか、相互理解の物語に安心する視聴者も多い」と、入れ替わりドラマが持つ〝癒やし効果?にも注目する。

「あのとき－」は中身は美人の漫画家、体はおじさんだ。外見に左右されない、中身が大事というメッセージ性は際立っている。「誰かと理解し合い、自分そのものを見てもらえる関係性。そういうものへの憧れが支持につながっている」と指摘した。

貴島プロデューサーに聞く「入れ替わり」

－－直前に放送され、高視聴率だった「天国と地獄」は意識したか

「楽しく拝見した。こちらの企画自体は１年以上前から進んでいたので、他局とかぶっても特に意識はせず。今作は入れ替わりドラマとしては変則的で、主人公は傍観者。かつ片方がすでに死んでいて元には戻れない。『大切な人の死をどう乗り越えるか』に焦点を当てて描いている」

－－ドラマ制作で大事にしていることは

「世界中の誰か一人でもドラマを見て元気になってもらうこと。来週が楽しみな連続ドラマを作りたい」

－－今後の展開は

「４日放送の６話のラストからがドラマの本題スタートとなる。それぞれの愛や、抱えていた後悔がどこへ着地していくのか、最後まで見届けてほしい」